誰も書かなかったアメリカの性教育事情


まえがき

 わが国では、ティーンエージャーの性の乱れがとみに指摘されているが、アメリカでは「結婚まで性交渉を行わない」ことを促す自己抑制教育が10代のシングルマザーや人工妊娠中絶の減少に効果を発揮しつつあり、これが全米の3分の1の公立中高校で行われている。

 本書は、米国のさまざまな自己抑制教育団体を取材しながら、多感で性にアクティブな段階の若者に、こうした伝統的な家庭観とも言えるメッセージをいかに浸透させているかを伝えるものである。

 全米の主要な自己抑制教育の指導者が一堂に会したカンザスシティーでの会議を基点として、さまざまな証言やルポを交え、時にその教材を詳細に紹介しながらメソッドを整理し、日本の読者に、アメリカで起きている自己抑制教育に向けての情熱と方法論が伝わるように配慮した。

 1960年代から70年代にかけ、アメリカはキリスト教的価値観が崩れ、巷ではポルノグラフィーや性を売り物にするショップがあふれ、フリーセックスが横行するすさまじいセックスレボリューションの嵐に見舞われ続けた。

 しかし、80年代に入りレーガン政権の登場とともに、伝統的な価値観の見直しを推進する運動が台頭、その流れの中で、自己抑制教育団体も次々と誕生してきた。そして、2003年には、純潔の保持をセールスポイントとして訴えたエリカ・ハロルドさんがミス・アメリカに選ばれるほどに変貌を遂げている。

 振り返って見れば、わが国は戦後しばらくは、純潔教育が中心であった。だが、その内容はあまり明確ではなく、社会の保守的な考え方に支えられてきたものだった。これが、米国のフリーセックスの流れを汲む団体が1980年代にわが国で設立される中で遠ざけられていき、90年代には、性知識と避妊をあからさまに教える包括的性教育が全国津々浦々に浸透していったのである。その結果、わが国はいま、手の施しようがないような性の荒廃状況に直面している。

 幸いにも、国会では行き過ぎた性教育が問題とされ、その実態調査が行われるようになり、全国高校PTA連合会の世論調査では、親の約9割が高校生の性交渉には反対としている。また、本書の最終項で書いたように、自己抑制プログラムを受講した中高生は、ほとんど一様に感銘を受け、「この内容を広めてほしい」と訴えているのだ。国民の良識はまだ厳然として残っているのである。

 米主導の戦後改革が生んだ戦後教育により日本の伝統的価値観が崩されたことは否定できない。その延長線上で生じた日本の過激な性教育による現在の惨状を、米国の自己抑制教育によって是正していくというのはいかにも皮肉である。

 だが、米の自己抑制教育は、価値観や方法論が明確であるうえ、必ずしもそれを押しつけるのではなく、議論しながら、人生においてどちらの選択がより良いかを納得し選んでいく形になっている。こうした明確な構成に基づく教育方法は残念ながら日本には欠けていた。

 このメソッドが広く受け入れられ、わが国が誇りとしてきた家族の強さを取り戻す一助になればこれに勝る喜びはない。

 2007年10月14日

世界日報「自己抑制教育」取材班キャップ   山本 彰


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