「新日本共産党宣言」の正しい読み方

ジャーナリスト 今井道夫

日本を革命から守る本

 「この国のいっさいの流れを変える本」と帯に銘打たれた「新日本共産党宣言」(以下「宣言」)は、対談した不破哲三日本共産党委員長と作家・井上ひさし氏の期待にたがわず、十数万部を売り上げた。社会的認知と政権参加への手ごたえを感じたかもしれない。この「宣言」を完膚なきまでに批判したのが本書である。こちらの帯には「美しい国・日本を『革命』から守る本」と記されている。

 目次を開くと上段に本書、下段にはそれに相応した「宣言」の目次が書かれ、「宣言」と対照しながら、読み進むことができる工夫がなされている。

 どの章も重要な論点を含んでいるが、特に井上氏が不破邸をたずねて、趣味の人形コレクションの中に明治天皇の人形があるのを見て「いつのまにか『やっぱり日本人じゃないか』とつぶやいてしまいました」というくだりは興味をそそられる。井上氏の驚きに共感していると、不破氏が別の個所で「この制度(天皇制)をなくす日は、必ず来ると思います」と述べていることを見落としてしまうことになる。

 またカトリック信者、井上氏が、「選挙では必ず日本共産党の候補者に票を投じて」きており、前妻・西舘好子さんの自著「修羅の棲む家」(はまの出版)の中で妻を「リズムをつけて殴打」するなど蛮行を繰り返していたことが語られている。カトリックが離婚に厳しいこと、また徹底した反共主義であることを井上氏はご存知ないはずはあるまい。共産党支援のためにカトリックを巧妙に利用していると、鋭く分析している。

 経済政策についての対談ではカトリックならぬソニーの故盛田会長の権威を利用していることが指摘されている。文芸春秋に寄稿された盛田論文を引用し不破氏は「私たちの主張、提案とぴったり合っているので驚きました」と語っている。本書ではそれが盛田提言を”つまみ食い”したにすぎないことを指摘。マクロ経済の立場から共産党の経済政策を実施すれば企業の息の根をとめ、国際経済も大混乱に巻き込みかねないと数値をあげて論じている。

 「宣言」は、日本共産党の”生みの親”であり、”育ての親”であるソ連が崩壊した気安さもあるのか、ソ連を「歴史的巨悪」と切り捨てている。その一方で「本来の敵」である米国に対しては「現在のアメリカの社会にも、政治や経済の制度には、日本が学ぶべき多くのすばらしいものがあり、私たちはそれには評価を惜しまないものです」と歯の浮くような賛辞を呈している。しかしその賛辞が、不破氏が巨悪と名指ししたスターリンがアメリカ人の生き方を称賛した内容と似ているとの本書の指摘は説得力がある。スターリンはヤルタ会談でルーズベルト米大統領を持ち上げながらろうらくし、欧州の東西分断に成功した。不破氏の”切り崩し”のターゲットは日本の親米保守派であろう。

 各ページの密度が高く、巻末の用語索引がほしくなる。

(世界日報社 本体一、五〇〇円)


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