終わりに

 平成14年5月、米国の首都ワシントンでアジアの安全保障をテーマにした日韓米3カ国の専門家によるセミナーが開かれたが、そこで「オキナワ」の持つ存在感をあらためて実感させられた一幕があった。

 日本側参加者とくに沖縄からの参加者が紹介されると、ブッシュ政権スタッフや上下両院議員はじめ専門家ら米国側の参加者全員が、総立ちになって拍手を送ったのである。しばらく鳴りやまなかったほどだ。

 これを、沖縄が深く米国の軍事戦略に組み込まれている証だと受け止めることもできようが、この自然で熱い反応ぶりは「オキナワ」への日常的な関心の強さ、もっと言えば率直な米国人の「感謝」の表れとも感じ取れたシーンだった。

 たしかに、冷戦後、旧ソ連の衰退に伴い、事実上唯一の超大国となった米国には「単独行動主義」との批判はある。だが、「湾岸戦争」への対応にもみられるように、世界の平和と安定に米国の役割は不可欠である。それが「貿易立国」として生きるわが国にも、どれほどの国益をもたらしていることか。

 そうした米国の“任務”遂行に、沖縄は多大な貢献を果たしていることを忘れてはなるまい。と同時に、それであるがゆえに沖縄が大きな負担を強いられていることも、米側はよく認識している。それが冒頭の「感謝」となって表れているといえるだろう。

 こうした最前線の「オキナワ」に象徴される日米安保体制は、さまざまな問題を抱えていることは事実だが、その解決のためには同盟国としての相互信頼関係をふだんから築き上げていくことが重要だろう。

 本書では、「沖縄」をはじめわが国を取り巻く安全保障環境と防衛政策を扱っている。もちろん、これ以外にも多くの論点はあるが、共通していえるのは個々の政策も日米安保体制と不可分であることだ。その中の有事法制1つをとってみても、自衛隊が有事の際、自国内でいかに円滑に行動できるかを定めようというものだが、「テロ」や「不審船」など、まだまだ不備な点は多くある。今後大いに議論して、より充実した法制にしてほしいものだ。

 政府や国会が必要な防衛関連法の整備を怠ったりするようなことにでもなれば、わが国は「自国防衛」にすら自覚の乏しい国柄と言われても仕方ない。米国はおろかアジア各国の信頼も得られなくなるだろう。

 わが国を取り巻く安保環境は予断を許さないものがある。その意味で「沖縄」の重要性とともに、国内の防衛政策はすぐれて「国際問題」であるともいえる。本書が、そうしたわが国防衛のあり方を問う上で参考になれば、これにすぐる喜びはない。

平成14年7月吉日
世界日報編集局次長兼論説室長 黒木正博


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