『つい口ずさみたくなる金言名句』を読む:書評人生の知恵や教訓学べる文章は短いほど難しい。それは小説においても同じで、短編であればあるほどその作家の実力が問われる。長いものは途中で修正が利くが、短い小説では、ちょっとした傷が致命傷になりかねない。
人類の歴史において、人々はさまざまな名言を残してきたが、これも短い言葉の中に人生の知恵をちりばめた傑作が多い。その人ならではの至言は、同じような問題で悩む者にとっては、闇夜を照らす星のように人生という航海を導いてくれる。
また、金言やことわざも同じ。短い言葉に込められた人々の英知は、世代を経て多くの人々の口の端に上り、磨かれ、余計なものがない実に含蓄に富むものとなっている。
本書は、そうした人々の知恵によって磨かれ宝石のように輝いている金言名句を世界中から収集して、研磨機ならぬ編者の選択眼によって洗い出されたものだが、その言葉の数々は、寸鉄人を刺すものもあれば、しみじみと味わうもの、人生の教訓となるものなどバラエティーに富んでいる。
従来の本にも、同じような意図で編さんされたものもあるが、本書がそれらと一線を画するのは、アジアの韓国のものやロシアのものが多数収録されているところである。民族や国家が違っても、同じ人間として共感するものも多いし、同じ意味を別な言葉で言い換えているという印象の所もないではない。
しかし、そうした微妙な表現の端々に、その国のお国柄といったものが表れていて、それはそれで興味深いものがある。
金言名句は、批評するものではなく、実際に読んでみるのが最上の味わい方なので、本書の中から幾つか紹介しよう。
「何を達成したいのか分からなければ、いかなることも成功しないだろう」(マカレンコ)
「嘘が真理に育つことは決してありえない」(タゴール)
「遅くとも、しないよりはまし」(イギリスのことわざ)
「あす、この世が終わると言われても、われは、きょう木の苗を植える」(ルター)
「成功が偉人をつくる」(ナポレオン一世)
「物は新しいほど良い。友は古いほど良い」(アラブのことわざ)
アトランダムに抽出したものだが、このほかにも書き抜いておいて、座右の銘のようにしたい名句も多い。
本書は弊紙の巻頭に毎日掲げてあるものの膨大なストックのうちの一部であるが、構成としては、「人間」「人生」「政治」「社会」「愛」「信仰」「教育」などの項目に分類されていて、どこから読んでもいいようになっている。
人生の知恵や教訓を学ぶ一冊として書架に備えておきたい一冊である。
羽田幸男
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