書評「共産主義を崩壊させた人びと」大塚 克己編著 記憶すべき文鮮明師の大貢献一九一七年十一月ロシアに地球上初めて現実の国家として地歩を固めた共産主義は、このソ連を砦(とりで)として、全世界を共産化する国際共産主義運動を展開した。 共産支配は、一九二四年にモンゴル、第二次大戦後に一挙に東欧八カ国に拡大。米欧はトルーマンのもとNATO(北大西洋条約機構)など「封じ込め」で対抗した。アジアでも戦後、中国、北朝鮮、北ベトナムが共産化され、さらに一九七三年に米国がベトナム戦争を離脱して後、一九七五年南ベトナム、ラオス、カンボジアが共産化。 他方、一九五九年以降カリブ海にもカストロの共産キューバが生まれ、またベトナム戦後、米国の軍事力と意志力の低下に乗じて、一九七〇年代後半には、アフリカのエチオピア、アンゴラ、モザンビーク、中米のニカラグア、中東の南イエメン、そして一九七九年にはアフガニスタンまで、ソ連の共産支配が拡大した。 マルクス・レーニンの世界共産主義革命の夢想は、この頃まで、順調に進行しているように見えたかも知れない。しかし、レーガンのもとで一九八〇年代から、米国の(トルーマン、ケネディ以来の)反共再覚醒があり、そうした自由民主を掲げる強いアメリカの対ソ外交のなかから、まず一九八九年には「ベルリンの壁」崩壊に至る東欧諸国の自由化、民主化が生まれ、遂には共産主義の総本山ソ連自身さえ、一九九一年八月のソ連共産党守旧派のクーデター失敗を契機に、エリツィンのロシアらスラブ三国の独立国家共同体(CIS)形成により一九九一年十二月消滅してしまうのである。 この本は、戦後日本の言論界に毒されてきた多くの日本人にとっては正に青天の霹靂(へきれき)だったに違いない「共産主義崩壊」が、いかにして齎(もたら)されたかを解き明かしていて有益である。 レーガンが共産主義を悪の源泉と決めつけたのは有名だが、そうした認識を米国民に共有させるうえでVOC(ビクトリー・オーバー・コミュニズム=勝共)運動が力を発揮したこと、レーガンの当選や政策遂行にVOCやワシントン・タイムズが貢献をしたこと、そしてそのレーガン大統領こそ、(ソ連が一九六〇年以来一貫して挑んだ軍拡競争に、巨大軍事予算とSDIで断固受けて立って競り勝ち)ついにソ連ゴルバチョフ大統領に対米和解、というより(共産主義守旧派のクーデターさえ生んだ共産主義)屈服の道を選ばせたのである。 本書では直接崩壊させた人々だけでなく、崩壊の道を整えたソルジェニーツィンや小泉信三氏ら”戦士”たちの思想と人生もわかりやすく紹介している。 それにしても、世界的に著名な現代の宗教精神指導者・文鮮明師が、人間の敵・共産主義を崩壊させるうえで、その時々必要に応じ、VOCを作ったり、ワシントン・タイムズを創刊したり、ゴルバチョフと会談したりして、何人もなし得ないような、スケールの大きい貢献をした事実は、共産主義崩壊を喜ぶ自由主義者すべてによって記憶されなければならない。 その意味でも本書の意義は大きいが、同時に、本書は未だに残る共産主義の危険に目を向けさせている点で自由を愛する多くの人に読んで欲しい一書だ。自由の側は共産主義ソ連に勝利したとはいえ、共産主義は中国、北朝鮮に健在であるし、ロシアでも自由のなかで復活を狙って活動しており、イタリア、フランス、ドイツ、それに日本でも、それぞれ危険な動きがある。それらをこの本は具体的に摘示している。 (世界日報社 一、五〇〇円) back |