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「新しい道徳教育」への提言 あとがき
世界平和教授アカデミー事務局長 こうした認識の下、世界平和教授アカデミーは、創設(1974年)以来、世界各国の学者の叡智を結集しながら、未来指向的・学際的学術団体として、これまで日本国内外の諸課題に取り組んできた。そして、今日までの研究の成果を、『国際化時代と日本――10年後の国家目標』(1979年)、『東アジア総合研究論文集』(1986年〜88年)、『地球時代宣言――精神革命への挑戦』(1993年)等の出版物として世に問うた。 1997年(平成9年)度には、「新しい日本人の目標」研究プロジェクトを発足させ、三つの柱を立てて政策研究を行った。第一の柱は、深刻化する青少年の倫理問題への解決策、第二は、緊張する東アジア情勢における日本の役割、第三は、人類を取り巻く地球環境問題解決に向けた新しいパラダイムの構築である。その成果をまとめた提言書を、橋本龍太郎内閣総理大臣(当時)に提出した。 1998年(平成10年)度にはそれを踏まえて、「新しい世紀に向けた道徳教育への提言――戦後教育を洗い直す」というテーマの下に、教育問題に焦点を合わせて研究を進めた。今日の日本の姿の歪みは、まさに戦後教育・50年の成果であるとの認識の下、「経済」や「防衛」等と並んで、或いはそれ以上に、今こそ国政の中心に「教育」を置かねば、日本文明は崩壊してしまうという会員の強い危機感がこの研究発足の動機であった。 1997年春の神戸児童殺傷事件を一つの契機として、「心の教育」が国民全体の関心事となった。それを受けて政府・文部省では、中央教育審議会などを通じてその問題に取り組んだものの、そこから出てきた答申は、教育荒廃の本質にまで十分に踏み込めないまま、家庭におけるしつけの重要性、悪質なテレビ番組を規制するVチップ制の導入など小手先の改革を訴えるだけの内容のものとなった。 戦後、教育基本法を中心とした教育理念・制度の大改革があり、その結果として今日の教育状況があることを考えれば、戦後教育を総決算せずに、新しい方向・解決の道は見えてこない。そこで、本研究では、戦後教育の問題点を洗い出して、今日の状況に至ってしまった根本的原因を明らかにし、その上で21世紀に向けた教育のあり方、特に人格の完成を目的とした新しい道徳教育のあり方を探った。また、「心の教育」において最も緊要なのは、道徳教育と並んで宗教心の涵養である。政教分離を原則とする我が国において、宗教教育がどのように可能なのか、その点にも十分視野を広げて、本研究は行われた。 一方、米国では近年、新しい道徳教育の一形態として「人格教育」(Character Education)が全国で進められ、大きな成果を挙げている。米国における従来の道徳教育の失敗とそれに代わる新しい試みについて調べ、日本における道徳教育をどう進めていくかを考える上での参考にした。 本研究は、教育の専門家のみならず、さまざまな教育実践者の意見も取り入れながら進められた。以上の研究の成果を、政府・文部省の政策形成への現段階での提言としてまとめたものが、第4章の「新しい道徳教育への提言」である。もとより教育は、国家百年の大計である。アカデミーにおいても引き続き、包括的かつ実践的視点から教育問題の研究を進めているところである。本書が「教育再生」に向けて、全国民的議論の深まりを促す一助となれば幸いである。 最後に、本書の作成にあたり、アカデミー会員の方々をはじめ、各界の数多くの方々にご協力を頂いた。ここに記して、改めて感謝の意を表したい。 1999(平成11)年12月
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