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「道義すたれて国家なし」 周辺諸国よチベットの悲劇を忘れるな 世界日報2000年3月14日付掲載カルマパ17世のヒマラヤ越え それは「亡命」なのか、そうでないのか。ニュースが伝えられた時から、この言葉は禁句のように避けられてきた。 昨年12月28日夜、チベット自治区ラサ近郊のツルプ寺を脱出したカルマパ17世は、厳冬期のヒマラヤを越えて、インドのダラムサラに到着した。儀式に用いる黒帽を入手するための巡礼の旅だと伝えられた。 必ずしも巡礼にふさわしい季節ではない。冬期のヒマラヤを越えてくるチベット人難民は、週に平均40人に上るという。降雪や冷え込みで、凍傷になったり命を落としたりする人もいるらしい。 カルマパ17世がインドに着いた時にも、足は凍傷を負い、手には傷ができ、頬は乾燥でひぴ割れていたと伝えられる。まだ14歳の少年だ。ダライ・ラマ14世は少年と対面し、再会を果たした父と息子のように抱き合った。 『ニューズウィーク』(3月15日号)は、この一連の出来事を「若き活仏は中国を捨てた」の記事で紹介している。それによると、カルマパがチベットを脱出しようと意志を固めたきっかけは、1998年に起きた事件で、ツルプ寺内で刃物と爆発物をもった中国人2人が取り押さえられた。2人はカルマパの暗殺を企てていたと自白した。 その後のカルマパはインド訪問の希望を繰り返し中国政府に伝えていたが、許可は下りず、いっそう信者や訪問客との面会を制限されるようになる。 そうして昨年12月末、警備員に「特別の祈りの期間に入るので、宗教上の師と料理人以外は部屋に入らないでほしい」と伝え、警備員がテレビを見ている間に、彼は寝室の窓から外に抜け出すのである。 「共産党がチベットの仏教を破壊」 カルマパはまだ少年だが、チベット仏教カギュー派の最高位の高僧で、多くの信者に慕われている。そのインドヘの脱出の行動は、41年前に起きたダライ・ラマの亡命劇を再現しているようにも見える。というのは、カルマパのたどった体験や心情は、ダライ・ラマの場合と相通ずるところが大きいからだ。 ダライ・ラマは同誌のインタビューでカルマパの立場を代弁して語っている。 「中国は信者に共産党への忠誠を求めているが、そんなことが可能だろうか。共産党はチベットの仏教を破壊した。宗教の破壊者へ忠誠を誓えというのか? それは無理な注文だ」 カルマパはチベットでは正しい方法で修行を積むことができず、チベットの人々にも仏教にも仕えることは非常に難しいと判断して、脱出するほかはなかったと代弁している。 ダライ・ラマはチベットの立場を自由主義世界に向かって訴えるために『チベットわが祖国』(中公文庫)を著した。そのなかでひとつの章を「隣人、中国」にあてて、2000年にわたる両国間の関係について紹介し、その結論をこう述べる。 「チベットは何世紀にもわたって、中国と相互尊重の関係を享受してきた、明らかに別個の古い国家である」 「チベットは、中国の一部であったという中国の主張には、何らの歴史的根拠もない」 1948年に中国共産党のスパイがチベットに入って、その軍事力や外国からの援助の可能性について探り、それが貧弱なものと知るや、50年に中国軍が進撃して東部を占領してしまう。こうしてチベットの悲劇が始まるのだ。 チベットの代表部やダライ・ラマは、チベットが独立国であるという主張を中国側に否定され、屈辱的な協定が強制されていく。 杏林大学の平松茂雄教授は「中国のチベット政策」(産経新聞1月18日付「正論」)で、中国にとってチベットは、南アジア、西アジアに影響力を拡大するための戦略的に重要な位置にある、と毛沢東の認識を明らかにしている。軍隊が送られ開発が進められてきた理由だ。 この地域ではまだ冷戦は終わっていない。その脅威は無くなっていないのである。
【2000年3月の事件簿】 3・2*株式時価総額、ソフトバンクがトヨタ自動車 を抜き2位に。1位はNTTドコモ。 3・6*デビットカード、全国サービスを開始。約10 万店で利用できる。 3・7*政府、北朝鮮へ10万トンのコメ支援を発表。 3・8*営団地下鉄日比谷線が中目黒駅付近で脱線。 5人死亡、60人が重軽傷。 3・12*ローマ法王ヨハネ・パウロ2世、キリスト教 2000年の罪をざんげ。 3・15*北朝鮮、日本向け弾道ミサイル、ノドン1号 を100基保有。在韓米軍司令官が証言。 3・18*台湾総統選挙、陳水扁前台北市長が当選。国 民党長期政権に幕。 3・18*日本赤軍メンバー4人を逮捕。 3・22*ローマ法王、パレスチナを初訪問。 3・23*「オレンジ共済組合」詐欺事件で友部議員に 懲役10年の実刑判決。 3・24*埼玉保険金詐欺事件で金融業者を逮捕。 3・27*日本製紙と大昭和製紙、2001年4月に経営統 合。 3・27*ロシア大統領選、プーチン氏が当選。第2代 大統領に。 3・29*OPEC総会、170万バレル強増産で合意。 3・31*北海道の有珠山が噴火、水蒸気爆発が起きる。 避難住民は1万人を超える。
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